「残念」とか「惜しい」などという言葉は、安易に口に出せないのは重々承知しております。
「じゃああなたは、店でよく買い物してた?」と問われたら何も言い返せませんから。
それでもコロナ禍の巣ごもりによる鬱屈感の反動でしょう、華やかな色柄や民族調のモノづくりに人生でもっとも惹かれるようになったいまのタイミングで、
世界のエスニックを日本に紹介してきた歴史ある店が閉店するのを知ると、事情を探りたくなる思いに駆られます。
ポジティブな理由ならいいんですけども。
全国展開するチチカカのなかで珍しいフランチャイズ店として(知らなかった!)、25年も営業してきた最古参の小さな下北沢店。
2021年2月28日(日)に営業終了します。
チチカカ自体は全国のイオンモールを中心に数多くあるとはいえシモキタからなくなると、
「ほかのどこに行けばいーんだ?」
とちょっと頭を抱えます。
私の世代だと「エスニック=チチカカ」ですから。
オリジナル企画のウエアやグッズが品揃えの軸なものの、現地の品も当然多くありますし。
そして井の頭線の線路沿いにあり、車内からもよく見えるこの店はいま閉店セール中。
そこで魅力的な布を見つけ、思わず購入しました。
それが島みたいに細長い国、パナマ共和国クワ族の工芸品であるモラです。
ラグやテーブルセンターじゃないんです、女性の民族衣装の胸や背につける飾り布です。
なのでエッジが切りっぱなし。
上に物を置くような使い方じゃないんですね。
(知った口利いてますけど、実は購入した後にガシガシ調べました)
店で手に取り、立体的な布の重なりと糸ステッチの温もりを見て、
「これ手刺繍だよねっ」
と裏返すと、
「うわ、やっぱ手刺繍だ。でもパッチワークのような凹凸のある細い布の重なりは何??」
と、これまで見たことのない不思議なつくりに惹きつけられました。
調べてわかった構造は、まず布を何重にも重ねて縫い付け、描く絵の形に切り抜くことで立体的に仕上げていること。
(もっとも重なった箇所で布4枚。光に透かしてようやく判明)
切り抜いたエッジを丁寧に内側に曲げ入れて糸でまつっていくことで、ステッチは表に表れず、部分的に厚みが異なるユニークな質感が表現されてます。
布は平らに寝かせた状態でゴムのように横に曲げることはできないため、絵にするには形をくり抜くしかありません。
こんな手間を掛けても美しいモノをつくり身に付けようとする人々がいることに感銘を受け、実用性はなくても手元に置くことにしました。
ファッションを伝える仕事で迷いがあったとき、この業界にモヤモヤするとき(←いつもじゃん)、取り出して眺めるつもりで。
20枚くらいあった中で好みを厳選したこの一枚のプライスは、税抜の定価8,500円の60%オフ。
布づくりに掛かった時間や技術を考えると定価でも安いですけど、このオフプライスは爆安ですよ。
まだまだありますので(2月12日現在)、気になる方はどーぞっ。
この土地らしくローカライズされた物販店の灯がひとつ消え、新たにやってきたほかの都市と同じ多店舗カフェの華やかな輝きが道を照らす。
旬なモノ好きとしては新参組も大歓迎なんですが、たぶん店主の顔が見える店がシモキタですね、うん。
写真 © 高橋一史
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