2020年秋に登場したNVIDIAのGPU、GeForce RTX 30シリーズは、前世代から飛躍的な性能を遂げたことから大きな人気を呼び、同シリーズを搭載したビデオカードは8万円、10万円と高価なものでも好調に売れている。そして2021年に入って、ついに同GPUのノートパソコン向け版が投入された。
ゲーミングノート市場は拡大を続けているだけに、高い性能へのニーズも日に日に増している。それだけにノートパソコン向けのRTX 30シリーズは目が離せない存在だ。各社から搭載製品が登場しているが、MSIの「GP66 Leopard」は、「GeForce RTX 3070 Laptop GPU」の“フルパワー”を発揮できる設計が最大の見どころに仕上がっている。
ノートパソコン向けGeForce RTX 3070を搭載するMSIの「GP66 Leopard 10U」(GP-10UG-042JP)
旧世代のデスクトップ版アッパーミドルGPUを超える性能を発揮
それでは、気になるパフォーマンスをチェックしていこう。本機にはMSI独自の総合ユーティリティ「Dragon Center」に、パフォーマンス設定のプリセットが用意されている。今回は、標準的な設定の「Balance」、オーバークロック動作の「Extreme Performance」、動作音を静かにする「Silent」の3段階でテストを行なった。
Dragon Centerでパフォーマンスのプリセットを切り替えられる
Extreme Performanceプリセットはデフォルトの状態より、さらにGPUのOCに挑戦も行なえる。今回のテストではデフォルトの設定のまま測定した
また、性能の比較用として3Dベンチマークやゲームに関してはデスクトップ版のGeForce RTX 3070、GeForce RTX 2070でのスコアも掲載する。テスト環境は以下の通りだ。
【テスト環境】
カテゴリ |
製品名 |
CPU |
Intel Core i7-10700K(8コア16スレッド) |
マザーボード |
MSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFI(Intel Z490) |
メモリ |
Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL
(DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2933で動作) |
ビデオカード |
NVIDIA GeForce RTX 3070搭載カード、
NVIDIA GeForce RTX 2070搭載カード |
SSD |
Corsair Force Series MP600 CSSD-F2000GBMP600
[M.2(PCI Express 4.0) x4、2TB、
※PCI Express 3.0 x4で動作] |
OS |
Windows 10 Pro 64bit版 |
まずは、定番の「PCMark 10」、「CINEBENCH R20」から見ていこう。
スコアは高い順に「Extreme Performance」、「Balance」、「Silent」と順当な結果だ。とくにCINEBENCH R20は「Silent」でCPUのスコアがガクッと落ちている。CPUだけに負荷がかかる処理では、プリセットの違いが大きく出るようだ。
次は、ゲーミングPCでもっとも重要と言える定番3Dベンチマーク「3DMark」、実ゲームのテストを見ていこう。
3DMarkを見る限り、デスクトップ版のGeForce RTX 3070に対して2割から3割スコアが落ちるようだ。その一方で、デスクトップ版のGeForce RTX 2070に対しては本機のExtreme Performanceがすべての項目で上回っており、とくにレイトレーシング環境の性能を測定するPort Royalでの性能差が大きい。
新世代ゲーム機がレイトレに対応していることからも、この部分の性能は気になるところ。実際のゲームにおけるレイトレ性能は、このあとじっくり検証してゆく。ノートパソコンで、前世代のアッパーミドルを上回れる性能を実現したのは素直に喜ばしいところだ。
「アサシンクリード ヴァルハラ」はパフォーマンスのプリセットに関係なく、平均fpsはすべてデスクトップ版のRTX 2070を上回った。しかも、最高画質で平均60fpsを大きく上回っており、重量級ゲームもフルHD解像度なら十分快適にプレイできるのが分かる。
ウォッチドッグス レギオン(レイトレーシング無効)の計測結果
ウォッチドッグス レギオン(レイトレーシング有効)の計測結果
「ウォッチドッグス レギオン」は、レイトレーシングを有効/無効、両方の状態でテストした。このゲームでは、すべてのフレームレートでデスクトップ版のRTX 2070を上回った。
注目すべきはレイトレーシングを有効にした状態だろう。DLSSを使うのが前提になるとは言え、レイトレーシングの画質を最大に設定しても平均60fps以上をキープ。ノートパソコンでも、フルHDなら画質を気にせずリアルタイムレイトレーシングを用いたゲームを存分に楽しめるようになった進化には驚きさえ覚える。RTX 20シリーズに比べ、RTX 30シリーズがいかにレイトレーシングへの対応が強化されているのもよく分かるところだ。
続いて、FPS/TPSで144Hzの高リフレッシュレート液晶が活かせるのかチェックしてみたい。根強い人気のFPS「レインボーシックス シージ」と世界的ヒットのバトルロイヤルTPS「フォートナイト」を用意した。
レインボーシックス シージは、デスクトップ版のRTX 3070やRTX 2070に比べてほかのゲームでは見られないほどスコアがガクッと落ちている。とはいえ、それでも平均フレームレートは200fpsを超えており、十分144Hz液晶を活かせているので、パフォーマンスとしては必要十分。勝ちにこだわる人も満足できる性能だろう。
フォートナイトも最高画質で平均140fpsオーバー。144fpsには届いていないが、それでも高リフレッシュレートを十分活かせるフレームレートだ。このゲームでは、デスクトップ版のRTX 2070を上回っている。
ゲーミングノートにおいて重要な冷却性能についても触れておこう。本機は、冷却システムとして薄型ファン2基と6本のヒートパイプで構成される「Cooler Boost 5」を採用。これはなかなか優秀で、負荷がかかった状態でも静かではないが、決して爆音ではない動作音で収めている。高負荷時は冷却のため、ファンが爆音になるゲーミングノートもあるだけに、ここは進化を感じるポイントだ。
本体底面。複数設けられたスリットごしに、2基のファン、6本のヒートパイプで強力にCPUとGPUを冷却する「COOLER BOOST 5」冷却システムが見える
今回は、3DMarkのTime Spy Stress Testを10分間動作させたときのCPU/GPU温度、CPU/GPUクロックをフリーソフトの「HWiNFO」で追っている。
ここでもパフォーマンス設定を切り替えて計測しているが、クロックの推移を見ると、Extreme PerformanceのCPUクロックは4GHz動作に届く回数が多い、Silent時はGPUクロックが微妙に低い、といった差が見られるが、大きく差が出るほどではなかった。
しかし、温度推移ほうはガラリと様子が異なっている。Extreme PerformanceとBalanceのGPU温度は71℃以上にならないようコントロールされているのに対して、Silentは最大83℃にまで上昇、CPU温度もSilentが一番高い結果となった。Silent設定は、許容する温度をほかの2つよりも高く設定し、ファンの回転数が上がらない(=騒音が増えない)ようにしているようだ。Silent設定でもベンチ結果があまり下がらなかったのはこの挙動が理由だろう。
パソコンは冷えているほうが安定動作するもの。もちろん、今回のテスト結果で測定された温度は通常動作上問題があるレベルではないが、Silent設定は夜中や近くにほかの家族がいて気を遣いたい時など、パソコンの動作音を大きくしたくないシチュエーション限定で使ったほうがよいだろう。
レイトレ対応タイトルも楽しめる、パワフルな万能ノート
GP66 Leopard 10Uは、重量級ゲームを最高画質でも平均60fps以上を安定して出せる性能を持っているのが素晴らしいところ。デスクトップ版のRTX 2070を上回る性能を見せており、まさにゲーミングノートに新時代が到来したことを感じさせる1台だ。ビデオカードの性能はもちろん、144Hzの高リフレッシュレート液晶、どんな処理にも強い8コア16スレッドのCPUに使いやすいキーボードとスキのない作り。Max-Q仕様としないことでパフォーマンスを追求、結果として幅広い用途に活躍できる実力を手にした万能ノートに仕上がっている。
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