162頭が宙に浮く
「経営がたちゆかない」「馬をどうすれば良いのか」。新型コロナウイルス感染拡大で、2歳馬の競り市では全国最大規模の「トレーニングセール」（日高軽種馬農協主催）中止が16日に決まり、牧場からは悲痛な声が上がった。半面「競馬界に感染が広がれば打撃はもっと大きい」との見方も。それぞれの思いを抱え、各牧場は対応に追われる。
「（農協が）競りの主催者として、何ら別の販売手段を用意しないのはかなり無責任だ」。日高管内の牧場関係者からは憤りの声が相次ぐ。1998年の開始時は売却総額が1億円余りだった同セールは、最近5年連続で10億円を突破していただけに落胆が大きい。
今年は5月12日に札幌市中央区の札幌競馬場で開催されるはずが、上場予定の162頭が宙に浮いた形。馬を所有しながら競馬に参戦させることもできるが、競走馬は飼料代などが高くつくため、自力で購入者を探す以外に選択肢がない牧場が多いという。このため「判断が遅すぎる」と批判する関係者も少なくない。
新型コロナ感染は今月に入って全国で拡大し、7日の政府の緊急事態宣言に加え、中旬から道内でも急拡大したため、同農協は開催を断念。農協幹部は「セールで感染者を出し競馬界に広がれば、無観客で何とか続けているレースが止まりかねない」と語る。牧場側にも「競馬に影響が出れば、打撃はもっと致命的」と理解を示す声もある。
とはいえ状況は深刻。坂東牧場（平取町）の荒木一仁マネジャー（36）は「世界的にウイルスの影響がある中、中止は仕方ないが、競りで、どれくらい収入あったかと考えると、ダメージは大きい」と漏らす。
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